バリバラ「知られざる場面緘黙の世界」の内容紹介と感想(2017年10月15日放送)

2017年10月15日、NHK「バリバラ」にて場面緘黙(ばめんかんもく)が取り上げられました。スタジオに当事者を招くなど興味深い内容だったので、内容をまとめつつ感想を書きたいと思います。

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具体的な放送内容

放送された内容を順に追いながら書いていきます。なお、著作権などを考慮しテレビ画面のキャプチャは載せません。

導入

番組は街行く人々に「場面緘黙(ばめんかんもく)って知ってますか?」と尋ねるVTRから始まります。

最初に聞いたのはベビーカーを引いた母親2人組。場面緘黙というものは知っておらず、聞いたことさえないとのこと。続いての赤ちゃんを抱っこした母親も「初めて見て何やろな、と思いました。四文字熟語ですか?」と回答。

ここでナレーションが「ちがいます!」と言い、場面緘黙の説明に入ります。

場面緘黙は不安障害のひとつで、およそ500人に1人いると言われている。本来は話せるものの、特定の場面でだけ話せなくなり、社会生活に支障をきたす。人見知りとは違う。

こんな説明がなされていました。一般視聴者が興味を持ちやすい導入になっていますね。

加藤さん(当事者)の自宅での様子

VTRが切り替わり、加藤さん(男性・23歳)の自宅での取材風景に。当事者が自宅でテレビの取材を受ける様子なんて見たことがなかったので「うおっ、マジか」と一気に興味をひかれました。

女性スタッフが家を訪ね、玄関を開けてもらうと加藤さんの姿が。スタッフが「こんにちは。今日はよろしくお願いします。」と言うと、加藤さんは首を縦に振りました。会釈をしているようなそんな感じです。

スタッフも今回は緘黙当事者の取材だと分かっているためか、特に困惑せず「おじゃまします」と室内に入っていきます。

家の中に入ったものの、加藤さんは声を発することができず、スタッフを誘導するのもたどたどしい感じ。スタッフが「私どこに座ったらよろしいですか?」と聞くと、加藤さんはぎこちない動きながらも座ってほしい場所を指さしました。

この時、指をさすまでに少し間があり、そのあいだ両手の先が困惑したかのように動き続け、また指をさすときも自信なさげな体の動きだったのが印象的です。不安感や緊張感のあらわれでしょうか。

それはその後の「加藤さんどこに座りますか?」というスタッフの問いかけへの返事でも同じでした。

さて、ここから加藤さんへの質問が、まず「はいかいいえで答えられるもの」から始まりました。

スタッフ:東京に行ってきたんですね?
加藤さん:はい(うなずく)
スタッフ:楽しかったですか?
加藤さん:はい(うなずく)

といった感じで、首を縦に振る(はい)か横に振る(いいえ)かで答えていました。

その後、スタッフが「緊張のレベルが5段階だとしたら今いくつくらいですか?」とYES/NOで答えられない質問をすると、加藤さんは筆談で答えます。緊張感もあってか実際に「3~4くらいです」と紙に書くまで30秒くらいかかっていました。

この場面を見ていて「すごいな」と思いました。なぜなら、僕は人に見られながら、ましてカメラで撮影されながら自分の考えていることを紙に書くなんてできないからです。

放送をリアルタイムで見ながらツイートしたのですが、僕の他にも同じ感想を持った緘黙当事者・経験者は結構いました。このツイートにもいいねが10個くらいついています。

さて、放送内容に戻ると、続いて加藤さんと加藤さんの母親の2人っきりの場面が流れます。母親と2人っきりの時だけは会話ができるとのこと。実際、母親との会話はスムーズにできていました。質問にも間をあけずに答えています。

しかし、その場にスタッフが現れると途端に緘黙の症状が出てしまいました。

緊張するとどうなるかという質問に対し、加藤さんは「喉が麻痺する感じです」と筆談で答えます。(←個人的にとても共感できる表現です)

加藤さんは小学校低学年の頃までは学校や外出先でも話せたそうです。しかし、だんだん外で話せなくなり、いつの間にか母親と祖母としか話せなくなったとのこと。周りの人からは理解されず、「喋らないのは楽だ」などと言われた経験もあるそう。

加藤さん(当事者)の職場での様子

そんな加藤さんは3年前から新聞配達の仕事をしており、新聞販売所の所長から指示を受けている場面が流れます。

「なんだか一方的に話しかけられているみたいだけど、ちゃんと意思疎通はできているの?」とナレーションが。

所長さんは「加藤君の顔をよく見て『うん』言ってるか『ノー』言ってるか加藤君の場合は確認します」と言います。その発言の直後に加藤さんに向かって「大丈夫だよな?」と声をかけ、加藤さんがわずかに頷くと、所長さんは「頷いてます」と見逃しません。

加藤さんのことを「大事な戦力です」と語っており、場面緘黙を理解していることが伝わってきました。

緘黙当事者4名がスタジオに

ここでスタジオの光景に切り替わります。ゲストとして加藤さん含む当事者4名(男性1名・女性3名)と臨床発達心理士・長野大学准教授の高木さんが招かれていました。

まず、加藤さんを除く3名が自己紹介をお願いされます。

「多くの人の注目を浴びた状態で自己紹介なんて大丈夫なの!?」と見ているこっちもハラハラしてきます。

1人目の女性はスムーズに自己紹介をしています。この方は小学生の時は学校などでほとんど話せなかったものの、今では”雑談が苦手”程度にはなっているとのこと。

2人目の女性は第一声がなかなか出てきません。15秒ほど経ってやっと名前を言うことができました。この方は家を一歩出ると喋れなくなってしまい学校でほとんど喋れないそうです。

3人目の女性も沈黙が10秒ほど続き、なんとか絞り出すかのように名前を言うことができました。その後、数秒の沈黙を挟みながらも自己紹介することができました。外ではほとんど話せないとのことです。

3人の自己紹介を終え、番組MCから出演者のルー大柴さんに「加藤君に質問ありますか?」とふります。

ルー大柴さんは「お母さんとだけでなくいろんな人と話したいな、という気持ちは今ありますか?」と尋ねます。

加藤さんはタブレットの音声アプリ(おそらく入力した文字を機械音声が読み上げるもの)を使い、「少しあります」と答えました。

ここでMCはゲストの高木さん(臨床発達心理士・長野大学准教授)に「なぜ言葉にならないんですかね?」と尋ねます。

高木さんは「話したい気持ちはあるものの、すごく緊張しやすかったり不安を感じやすかったり、それが話すという時にどうしても声にならなくなってしまうんですね」と答えます。

さらに「急にそういうふうになることってあるんですか?」という質問には「例えば幼稚園や保育園に入園するときとか、小学校に入った時っていうきっかけで話せない状態になっちゃうってことは多いですね。ただ、ある時突然話せなくなっちゃうっていうよりは、元々すごく不安を感じやすいとか、人とのかかわりでちょっと苦手さがあるっていうのが、そういう環境の変化によって表に出てきた、というように捉えるのが良いかと思います。」と回答します。

遠藤さん(仮名)のチャレンジ

VTRが切り替わり、スタジオで3番目に自己紹介した遠藤さん(仮名)がひとりでの買い物に挑戦したいと語ります。

ここで姿を現したのは臨床心理士の角田圭子さん。そう、かんもくネットの代表を務めるあの角田圭子さんです。角田さんは遠藤さんと8年の付き合いがあるとのこと。

実際に買い物に行く前に不安レベルのチェックシートを使い、どんなことがハードルとなるのか分析します。洋服を買う時の行動を書き出し、レベルごとに振り分けていきます。

例えば「お店に入る」はレベル2(ふつう)、「試着させてくださいと言う」はレベル4(かなり緊張)、のように自分が何に不安を感じるのか分析していました。

角田さんは今回のチャレンジに際し「今できることから少しずつ広げていくということが自信をもつということで不安を下げて、自分の本当の力を出していくことにつながっていくのかなと思います」と話していました。

いよいよチャレンジ当日。

お店に入るのは難なくクリア。「試着できますので言ってください」という店員の話しかけにも会釈で対応することができました。しかし、それから進展がないまま30分が経過。遠藤さんが番組スタッフに近付いてきます。

スタッフ:どうしました?
遠藤さん:……
スタッフ:もしかしてほしいものがない?
遠藤さん:(首を横に振る)
スタッフ:あっ、違いますか。ちょっと疲れてきちゃった?
遠藤さん:(首を縦に振る)
スタッフ:1回休憩します?
遠藤さん:(首を縦に振る)
ナレーション:事前には分からなかったが、実は服を決めること自体がもっとも緊張することだった。

この一連の流れを見ていて共感しました。「どうしました?」などの「どう?」的な質問に答えられないことや、自分が○○したいんだ(この服を着たい・買いたい)となかなか表現できないことなど、僕自身も思い当たることがあったからです。

さて、放送内容に話を戻すと、ここで遠藤さんの母親が助っ人として登場し、服を選ぶところだけを手伝ってもらうことになりました。すると無事服を選ぶことができたので、そこからひとりで店員さんに試着を頼みに行きます。

店員さんに近付いていくと「ご試着されますか?」と声をかけてもらえたため、遠藤さんは頷いて自然と試着室へ入っていくことができました。そしてレジで会計し、初めてのチャレンジを成功という結果で終えました。

ここで再びスタジオに切り替わります。

MCから遠藤さんに「チャレンジしてみてどうでしたか?」と質問を投げかけると、「前よりもお店との間に壁がなくなった感じがして入りやすくなりました」と遠藤さんは答えました。

また、MCは「これは繰り返していくといい感じになっていきそうなんですかね?」と臨床発達心理士の高木さんに尋ねます。

高木さんは「これは一見何事もないようにやっているんですけども、何ができそうか、どのくらいのことだったらできそうか、ということを丁寧に話し合って、ここまではできる、これはできないかもしれない、というギリギリのところを見極めて、それのほんのちょっと一歩先に挑戦してみた、と。だから大事なのは本人がちゃんとこれならできそうだな、と自分自身でできそうなものを考えてやること。もうひとつは専門家の力をちゃんと借りるということも大事だと思います。」と回答しました。

周囲はどうサポートすればいいか考える

場面緘黙のある人に対して、周りはどうサポートすればいいのかルー大柴さんとバリバラレギュラー陣で考えていきます。当事者の4人には「いいね」と「うーん」を表した札が渡され、どちらかの札をあげて対応が適切か判断してもらう、という内容です。

【シチュエーション1:授業での音読】

あなたは学校の先生。場面緘黙のある生徒が音読のときに声を出さず固まってしまった。あなたならどうする?

これに対して出演者たちは「それでは読める時に読みましょうね、と言う」「もう1回まわってきた時に読んでもらおうかな、と言って一旦順番を飛ばす」「(本人が)読めると言うのであれば待つし、今日は読めないと言うのであればまた今度考えようというように一個ずつ確認する」といった意見を挙げていました。

まず「1回順番を飛ばす」については、4名の当事者のうち2名が「いいね」、もう2名が「うーん」の札を上げ、意見が分かれました。

「うーん」を挙げた方に聞くと、「不安になると思いました」との回答。これは僕自身の想像になってしまうのですが、おそらく次の番が来るまでずっとソワソワした気持ちが続いたり、あるいは次も読めなかったらどうしようという意味での不安なのかと思います。

また、別の「うーん」を挙げた方は、「次言ってくださいねってなると、次は絶対に言わなければならないというプレッシャーになってしまう」という意見でした。

次に「読めるかどうかなど本人に聞く」については、4名とも「いいね」を札を上げました。

このシチュエーションにおける対応策として、高木さんは「二人一組で行う・班の中で行う・別室で行う(別室で読んでもらって音読できたことにする)・家で行う(家で読んだのを録音して流して音読できたことにする)・どうしてもできない場合は順番を完全に飛ばす」などが考えられると言っており、同時に一人ひとり違うため、それらを確認するということが大事と話していました。

【シチュエーション2:店で筆談】

あなたは店の店員。場面緘黙のある客が筆談で話している。しかし、時間がかかり長い間がある。あなたならどう対応する?

これに対して出演者は「他の作業をしながら待つ」と回答。これに対して当事者4名は皆「いいね」の札を上げ、具体的意見としては「せかさずに待ってくださる、というのがいいなと思います」というものがありました。

高木さんも「待つというのは基本だけれども、待つときにいかにも待ってますよという感じにしないことが大事」という旨の発言をしていました。

それを受け、MCが「そうだとしたら自分の今日の対応は間違っていたかもしれない。(自己紹介の場面などで)いかにも待ってますよという感じを出してしまった。逆にプレッシャーになりましたかね?」と当事者の4名に投げかけます。

しかし、4名は何も答えることができず、間があきます。

ここでMCは話題を変え、「この場に何か言葉を残していけるとしたら何かありますかね?なんでもいいので教えてもらえますか?」と今度は全員に投げかけるのではなく、○○さんから、と指名して尋ねます。

それに対する4人の答えは、

「いろいろ話しかけてくれた人がいたんですけど、応えられなかったりして本当に申し訳なかった。でも本当は話したい気持ちがあったなっていうのを(その相手に)言えたらよかったなと思います。」

「家では本当に普通に喋るので、外で黙ってしまうのがすごい悔しい。」

「昔から話せなくて話しかけられても返事できなくて無視してるみたいに思われるけど、本当は話したくて頑張っているのでもっとたくさん話しかけてほしい。」

「理解が広まっていただけたらいいなと思います。」

というものでした。

番組終了

最後にMCからルー大柴さんへ今日の感想を求めます。

ルー大柴さんは「スタジオで当事者のみなさんとトゥギャザーでいろいろお話ししたんで、みんながやっぱり会話をしたいんだと、できるんだったら喋りたいという気持ちがひしひしこっちに伝わってきたんで、すごいフレンドリーな気持ちになりました。」と答え、番組は終了しました。

感想

あくまで個人的な感想です。緘黙経験者みんなが同じ感想であるわけではないことをご理解いただけますと幸いです。

共感することだらけだった

放送時間である30分間、「分かる分かる!」と共感することが多くありました。

番組では序盤に加藤さんの自宅での様子が放送されていましたが、加藤さんの仕草というか纏っている雰囲気も含めて、症状が和らぐ前の僕にすごく似ているなという印象を受けました。

加藤さんが自宅にスタッフを招き入れた際の身体の動きが印象的だった、と上の方で書いているのは、僕自身もまるっきり同じようなぎこちない動きになることが数多くあったからです。

加藤さんだけでなく、スタジオ出演をした女性の当事者の方達も「自分と似てるな」と思いました。特に自己紹介を求められて第一声が出るまでの沈黙は、「どうしよう。言わなきゃ。」という本人の気持ちが伝わってきて、僕自身もすごく緊張しました。

番組終盤の4人それぞれが残した言葉は、どれも僕が思ったことのあるもので、テレビを通して代弁してくれてありがとうという気持ちになりました。

リアル感が出ていてよかった

番組全体を通して緘黙当事者のリアル感を伝えられていたように思います。

取材内容をもとに演者が演じるのではなく、当事者自身が登場し、自宅での取材の様子やひとりで買い物に挑戦した様子が放送され、場面緘黙を知らない人にも「場面緘黙ってこういう感じなんだ」と理解してもらえる作りになっていたように感じました。

特に良かったのは、質問されてからそれに答えるまでの沈黙の時間をそのまま放送したことです。もしかしたら編集だったり撮り直したりでスムーズなやり取りを放送することができたのかもしれません。

しかし、第一声がなかなか出てこないという緘黙当事者、あるいは当事者に接する人にとっての「日常にありふれた光景」をそのまま流すことで、場面緘黙のリアルを視聴者に強く印象付けられたのではないでしょうか。

自分の周りの人に見てほしいと思った

そんなリアルさが表現された当番組だからこそ、僕は自分の周りの人に見てもらいたいなと思いました。現在の周りの人だけでなく、不可能ですが放送内容を録画したテープを過去に持って行って小中高大学の同級生に見せたいほどです。

ただ、これは今回出演した当事者の方々が自分と同じようだったからこそ「リアルだ」と感じ、見てほしいと思えるのかもしれませんけどね。

周囲のサポートにまで話が及んでいてよかった

「場面緘黙とはこういうものですよ」という話だけで終わるのではなく、「それじゃあ周りの人はどうサポートすればいいの?」という点にまで話が及んでいてよかったなと感じました。

例えば、まず加藤さんが「筆談」でやり取りをしていたことだって、場面緘黙のことを知らなかった人に「そういう意思疎通のやり方があるんだ!」と知ってもらえるきっかけになったかもしれません。

遠藤さんが買い物に行く前、臨床心理士の角田さんと「どういった要因が不安や緊張のもとになるか」と分析していたシーンも、場面緘黙の子を持つ親や担任の教師などにとって参考になるものがあったのではないでしょうか。

そして、提示されたシチュエーションにおける対応の仕方を出演者たちで考え、それが適切かどうか当事者が判断するシーンは言うまでもないでしょう。

また、このシーンでは「個人差の存在」が分かりやすく伝わる点も良かったと思います。

4名の当事者がそれぞれ「いいね」か「うーん」の札を上げるシステムのもと、1つ目のシチュエーションでは半分に意見が分かれ、当事者一人ひとり考え方・捉え方が違うというのが見ている人に分かりやすく伝わったと思います。

さらに、高木さんが示唆していたように「一人ひとり違っているため、それぞれに合った対応の仕方を考えるという態度が大切だ」ということも伝わったのではないでしょうか。

おわりに

非常に長くなってしまいましたが、番組の内容と個人的な感想をまとめてみました。

これだけ長い文章を読んでいただいた後に言うのもアレですが、場面緘黙症を取り上げた「ザ!世界仰天ニュース」の内容紹介と感想(2017年3月1日放送)なんて記事もあるので、興味があればまた読んでいただければと思います。

それでは、最後までありがとうございました。