元場面緘黙の僕が就職活動を振り返る

色々と場面緘黙の経験を書いてきた当ブログ。今回は就職活動を振り返ってみたいと思います。以前、元場面緘黙の僕が「大学入学~就職後」をざっくりと振り返ってみたという記事でも少し触れたのですが、「緘黙 就活」という検索ワードで訪れる方が少し増えてきたので、改めて就活だけに焦点を当てた記事を書くことにしました。

スポンサーリンク

はじめに

「元場面緘黙」とありますが、僕は大学在学中にだいぶ症状の改善がみられ、就活に挑む頃には声を出して笑ったり、2往復以上の会話が出来たり、たまにですが自分から話を振ったりすることが出来るようになっていました。

しかし、言葉が喉で詰まったような感覚になって喋れなかったり、そもそも頭が真っ白になって言葉が出てこなかったりすることも度々ありました。

当記事はこんな症状がある一個人の就活体験記として読んでもらえればと思います。あくまで僕自身の経験や考えを書いているため、緘黙の全ての人に当てはまったり共感されたりするものでは無いと思いますが、何らかの参考になれば幸いです。

なお、内容としては一般的な就活の流れ(説明会→履歴書・エントリーシート記入→筆記試験→面接・グループディスカッション)に沿って書いていきます。

説明会

セミナールーム

僕はだいたい3年の12月頃から就活を始めました。はじめは特に業界を絞らず、学内説明会をしにきている企業の中で興味のあるものに行っていました。その後、だいたいの業界を決めて学外の企業説明会へも参加しました。

この説明会への参加に関しては、緘黙でも特に困難なことはありませんでした。基本話を聞いていれば良いだけですからね。ただ、某企業で「リラックスするために隣の人と3分間お話ししてください」的な指示が出たのは焦りましたね。

その時は大学の専攻やサークルなどの当たり障りない会話で凌げましたが、余計ストレスが溜まってしまったのを覚えています。3-40回くらい行った中で1回だけだったので、説明会でそんなことをするのは珍しいのではないでしょうか。業界次第かもしれませんが。

また、これは合同説明会(大きな会場で複数の企業が個別の企業ブースを作って求職者に説明をする)に行った時の話。「何か質問はありますか?」と当てられてしまったのです。合同説明会ではブースに数人だけという状況もあるので、こういうこともあり得ます。

その時は用意していた質問をすることで難を逃れることができました。急に当てられたらパニックになって言葉が出てこなくなることは想定済みだったので、あらかじめどんな企業相手でも使える質問を考えて参加していたのです。

もし合同説明会や少人数の説明会に参加しようとしている方がいたら、あらかじめ質問を何個か考えておくと精神的にも楽ですよ。もちろん、自分が聞きたいことを聞くのがベストですが、他の人が先に質問してしまう可能性もあります。「何個か」というのはその点を考慮してのものです。

ただ、ここまで書いておいてアレなんですが、「質問ありますか?」と当てられるのは滅多にないことだと思います。僕の経験では質問が無かった場合そのまま終わるか、または進行役の企業の人が代わりに話し手に質問する方が圧倒的に多かったからです。

それでもなぜ書いたかというと、「こんなこともあったよ!」と伝えたかったからです。僕は起こりうる困難をなるべく把握していたいタイプなので、似たような人の参考になるかもしれないと思って書きました。

履歴書・エントリーシート・筆記試験

履歴書

就職活動では必ずあると言っていい履歴書・ESの送付、筆記試験(WEBテスト含)ですが、文章書いたり問題を解いたりすれば良いだけなので、緘黙の症状があるからと言って困難なことは僕の場合ありませんでした。

ただ、エントリーシートで書くエピソードについては少し悩んだところがありますね。

今はどうか分かりませんが、僕が就活していた時は「問題(課題)を発見し、周りを巻き込みながら解決していける人物」を”求める人材像”に掲げる企業がすごく多いなという印象を受けました。これまた業界によるのかもしれませんけどね。

そうなるとESの「あなたの強みが分かるエピソードを教えてください」などの欄で自分が求める人材像であることをアピールする必要があるのですが、他人を巻き込みながら何かを解決した経験なんてほとんどありません。

そもそも他人と会話をすることさえ精いっぱいなのに、自分が発起人となって周りに働きかけて何かを成し遂げるなんてことは、僕には到底できませんでした。

かと言って空欄で出すわけにはいかないので、あくまで等身大の自分の特徴をアピールすることにしました。「周囲の人を巻き込んで成し遂げたことを教えてください」なんて直球の設問があったところは諦めましたが、そうでないところは変に盛らずに書きました。

「盛らずに」とは言いましたが、選考試験であることを考慮し、仕事上でプラスになりそうな特徴を<学業・サークル・アルバイト>でのエピソードを通してアピールしました。

それでESは8割以上通っていたので、変に盛らずに出して良かったかなと思います。あくまで僕自身の感想ですけどね。

面接・グループディスカッション

就職活動を通して困難だったのはやはり面接ですね。面接担当者と喋ってやりとりをし、かつそれが評価対象となるわけですから、学生時代を通して症状が改善してきたとはいえ難しいものでした。

個人面接は大丈夫だった

とは言うものの、個人面接は大丈夫でした。ここで言う個人面接とは、志望者が1人であることを指しています。面接担当者は1人の場合もあれば、数人の場合もあります。この個人面接は特に大きな問題なくこなすことができました。もちろん緊張はしましたけどね。

質問に答えられる程度には症状が改善していたことも大きいですし、あらかじめ質問されるであろう内容を覚えて面接に臨んでいたことも大きいでしょう。

履歴書やエントリーシートに書いたことはもちろん、想定される質問(「まず自己紹介をしてください」など)に対する返答をワード文書にまとめ、記憶していました。

暗記して面接に臨むのは良くない、という意見もあります。むしろ、それが主流な考えなのかもしれません。しかし、何を話すか覚えないと絶対に言葉が出てこない。これまでの人生の経験からそう確信していた僕は、やむを得ず暗記して臨むことにしたのです。

もちろん中途半端に暗記してしまうと「思い出そうとしている感」が出て印象が悪くなります。そこで普段から「原稿」を読んで記憶に定着させるようにしました。一言一句覚えるのは困難なので、「ここは外さない」という要点を抑えることを意識しました。

そうそう、「丸暗記した言葉は自分の言葉ではない」なんて意見もネット上ではありましたが、僕はそう思いませんでした。質問に対する回答をネットで拾ってそれを覚えるならアレですが、そうではなく自分で考えた言葉ですからね。

その意見における「自分の言葉」が意味するところは正直分かりませんが、とにかく緘黙の症状があった僕にとって質問と回答を想定しておくことは、面接試験を切り抜けるためのひとつの戦術だったのです。

ただ、毎回毎回個人面接が大丈夫だったわけではありません。一度、とある法人の面接試験における最初の質問で緘黙の症状が出てしまったことがありました。

その質問は「当法人について知っていることをなんでもよいので3つ教えてください」というなんてことない、いわば志望者の緊張を解くための質問でした。

ところが僕は言葉が喉元に詰まったような感覚になり、さらには身体もこわばって石のようになってしまいました。面接担当の方には「本当に何でも、場所とか何でもよいですよ。」と声をかけていただけたのですが、それでも何も答えられませんでした。

数十秒から1分ほど沈黙が続いたところで面接官の方が質問を変えてくださり、そこからは何故か普通に答えられるようになりました。もうダメかなと思ったのですが、結局その後も選考は進み、結果としてそこに就職することになったのですから分からないものです。

仮に面接途中で緘黙の症状が出てしまったとしても僕のようなことがあるので、月並みですが最後まであきらめないことが大切だと思います。

集団面接は辛かった

個人面接とうってかわってグループ面接は緊張度が段違いでした。グループ面接とは志望者が数人いるパターンですね。志望者同士は横に並んで座るので顔が見えるわけではないのですが、なんだか緊張してしまうのです。

他の志望者の存在を過度に意識してしまうんですかねえ。それも「みんなライバルだ!負けないようにせねば!」というタイプの意識の仕方とは違うんですよ。

単純に他の志望者の返答内容に意識が向いたり、「隣の人すごく緊張してそう」だとか「隣の隣の人はやけに頷きが多いなあ」と思ったり、そんなレベルの話です。何だかそういう目や耳に入ってくる刺激が多くてわけわからなくなっちゃうんですよね。

さらには自分が話している時も、「うわっ、自分の考えを同年代の人たちに聞かれている。」なんて面接とは関係ないところで緊張してしまい、しどろもどろになってしまうのです。

面接担当者は数人でも基本的に問題ないのに、志望者が数人だとダメになるんですよね。緘黙の症状が出やすい同年代の人がいるからなのか、自分の話を評価するわけでもなく聞いているだけの人がいるからなのかは分かりませんが…。

なお、当時は同年代を相手にする場合、1:1だと会話が少し出来るように症状が改善してきていたのですが、3人以上だとほとんど喋れなくなるという状態でした。大学の同級生からは一時期「ステルス」と呼ばれていたほどです。

グループディスカッションは更に辛かった

そんな僕にとってグループディスカッション(GD)は鬼門でした。9回挑んで全敗です。一度たりとも通りませんでした。当時は次の選考がGDだと分かった瞬間に不採用を確信したものです。正直今やっても通過できる気がしません。

企業がマーケティングのため、意識調査の一環で行うことがある。これによってニーズや消費者の気になるキーワードを確かめる意義がある。また就職試験でも人物試験として頻繁に行われており、この場合は一般論や正論を述べることが評価されるとは限らず、討論の結果よりも被験者のコメントおよびコミュニケーション能力、集団の中での役割が注目される。

「グループ・ディスカッション」『フリー百科事典ウィキペディア日本語版』2016/02/14 21:36

この説明文から場面緘黙の人にとってかなり困難な試験であることが分かります。意見を言うだけならまだしも(実際それさえかなり難しかったのですが)、さらには役割をこなさなければならないので大変です。

役割は司会・書記・タイムキーパーあたりが一般的でしょう。その役割分担も立候補制だったり、「あなたは○○をやってください」という指名制だったりしたのですが、特に後者の場合は大変でしたね。

なんと僕が司会役に指名されてしまったんですよ。こういうのが得意な人にとっては「アピールできてラッキー」と思えるのかもしれませんが、僕には絶望感しかありませんでした。

それまで何回かグループディスカッションを経験していたので流れというか段取りは分かっていたものの、いざ司会をやるとなるとそう上手くはいきません。

人数は自分を含めて4人と少人数だったのは救いでしたが、それでも若干グダグダになってしまいました。周りの志望者の方達に助けられながら最後の発表まで終えることができましたが、やはり次の選考には進めませんでした。

その他、書記をした時や、人数上の問題で何の役割も担当しなかった時、それら全てで落とされてしまいました。メインはディスカッションですからね。そこで何の印象も与えられない僕は落とされて当然だったのでしょう。

面接やGDを振り返って

今思い返すと、面接に関して「やっておけば良かった」と思うことがひとつあります。それは、面接の練習、いわば模擬面接をたくさんしておけば良かったということです。

当時の僕は「なるべく人に関わりたくない」という思いから大学のキャリアセンターを利用せず、本番形式での練習を1回もやらずに選考試験へ臨んでいました。

しかし、面接試験を何回か受けていくと気付いたのです。上手に喋れないなりにも、回を追うごとに緊張が和らぎ、質問にうまく答えられるようになっていることに。練習してから本番に挑んでいれば、通らなかったあの面接試験の結果も変わっていたかもしれません。

一方、グループディスカッションに関しては、練習してもどうにもならなかったかなというのが正直な気持ちです。面接と異なり、回数を重ねても全く上達しなかったためです。あくまで僕の場合ですが。

おわりに

僕は高校生の時に場面緘黙というものの存在を知りました。ネットで「学校 話せない」と検索したところ場面緘黙がヒットし、「これだ!」と調べまくったことを覚えています。

就活や就職についても検索しました。不安だったからです。「普通の人」と同じように働けるのだろうか、そもそも就職活動で内定をもらうことができるのだろうか、と。

この記事は、そんな過去の僕と同じく将来を不安視している方に向けて書いた、という面もあります。

もちろん、緘黙の症状は人それぞれで全く同じなんてことはないと思いますが、それでも過去に場面緘黙だった人の就職活動体験記として何らかの参考になれば幸いです。

長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。