案外、方言だと知らないで使っている言葉ってありますよね。
僕は数年前、生まれてからずっと住んでいた宮城県を離れ、大学へ通うために上京しました。当時は駅の構内を歩く人の多さに驚いたのですが、なによりビックリしたのは「だから」が通じないことでした。
初めて「だから」を使った時の空気感が忘れられません。
僕は小さい頃から他人の発言に(強く)同意する時に「だから」を使ってきました。
- 「今日暑すぎ!」→「だから」
- 「○○って面白くない?」→「だから」
周りの人はみんな使っていた「(本当)そうだよね」という意味での「だから」。宮城県生まれの人だけでなく、同じ東北の県出身者にも通じたり、あるいはその本人が使っていたりしていたんですよ。
「だから」「んだから」「んだがら」と微妙に言い方が異なることもありますけどね。
そのため、標準語か方言か、という疑問さえ浮かんだことがないほど、生活の中で当たり前となっていた言葉だったのです。
しかし、それは間違いだったことに気付きました。
入学間もないある日、同じサークルの同級生と部室で話していた時のこと。具体的に何を話していたのかは忘れてしまったのですが、その同級生が僕にとって「あ、それわかるわかるー」というようなことを言ったのです。
当然、僕の口からは咄嗟に「だから」という言葉が。
するとどうでしょう。
狭い室内。2人しかいない空間。沈黙。高まる緊張感。言葉にせずとも「だから何?」という雰囲気……。
いや、メイがトトロに遭遇した時の「トトロ!」並のテンションで「だから!」と言えば「だから何?」と言ってくれたのかもしれません。が、実際にはズワイガニとタラバガニのどっちが好きかを聞かれて「タラバ」と答えるのと同じテンションでした。
どんな質問だよって話ですが、そのくらい真顔で言ってしまったということなのです。
結局、別の話題に移ったため、気まずさは残らずほっと安心。とはいえ、さっきの雰囲気なんだったんだろうという疑問は残ったのでした。
それから数日経った頃でしょうか。ネットだかテレビだかを見ていた時、衝撃の事実を知ることになりました。
「だから」は方言。
…………!!
驚きました。幼い頃から馴染みのある言葉が方言だったなんて。
翌日、このことを別の同級生に話すと『「だから」って言われたら「だから何?」ってなるに決まってるじゃん』との返答が。
同意の「だから」は通じない、という衝撃。東京には7年ちょっと住みましたが、これが地元を離れて一番のカルチャーショックだったと言えるでしょう。
ちなみに、同意を意味する「だから」は、宮崎・鹿児島・沖縄県などでは「だからよ」の言い方で使われているそうです。
同じような言葉が遠く離れた土地で方言として残っているなんて面白いですよね。さらに、アクセントをどこに置くかで地域差があるようなのも興味深いです。
ではでは、今回はこの辺で。